はじめに

私たちは遅れてゲームに参加します。
はじめにルールブックを渡され、ルールを理解したあとプレイするわけではありません。
ゲームをやりながらルールを覚えるよりないのです。
予想のやり方がわからないは構造的な問題です。

悩みを抱えた読者にこういう言い方もどうかと思いますが予想のやり方はこれが正解と言えるものはありません。
正しい手続きを踏めばいくつものルートからゴールに到達できるように競馬が作られているからです。
本書は枠順とレース結果の関係を説明することに軸足を置いて書いています。
当日の馬の状態(気配)やレースラップ、展開などと違ってレース後客観的に検証可能な情報が枠順だからです。

Aで起きたのにBで起きなかったのはなぜか?
レース後分析で重要なのはこの視点です。
結果に影響を与える動因を特定することができれば予想に活かすことができます。

結果を集めてそのあと分類するはよく見かける手法です。
書き手から提示されたデータとその説明に矛盾がないので大変説得力があります。
でも分類の説得力があることとレースの再現性は本来関係ありません。
一例をあげてみましょう。
過去10年1番人気は5回馬券に絡んでいますので複勝率50%。
ここに関西馬の1番人気という条件を加えると複勝率100%であることがわかりました。
今年の1番人気は関西馬なので買いが結論。
・・・この手のやり方に再現性があるかどうか疑問の余地が残ることは読者もご存じではないでしょうか。

競馬大学裏予想学部枠順学科。
本書の立ち位置はこの辺りになるでしょうか。
競馬大学にはさまざまな学部がありますが中でも裏予想学部はユニークです。
競馬は走る前から結果が決まっていると考えているからです。

勝ち馬はAである。
勝ち馬はAでない。

日本語は文末に重点が置かれていますので最後まで目を通さないと結論がわかりません。
日本語に限ったことではありませんが細かな違いを正しく認識できてなければ文章は読めません。
日常やっている文章読解を枠順でやるのが枠順学科です。
ただし本書はトリッキーな方法で枠順読解します。
裏予想だから裏の数字を使う、よろしいですか?

枠順は誰が作っているのか。
JRAの公式見解はコンピュータによる抽選です。
同じ前提からまったく別の結論が導けることに留意してください。
だまされてはいけません。

(前提)

枠順はコンピュータによる抽選である。

(結論)

だから無作為(ランダム)である。
だから必然である。

コンピュータの中身は計算です。
コンピュータによる抽選で作られる枠順もまた計算で作られています。
勝ち馬予想は計算のことだったのです。
冒頭お話した分類に戻りますとこうなります。
計算結果を分類することよりも計算のやり方それ自体を覚えておけばよい。
数学が得意な読者はここから入るのがよいかもしれません。

裏ということばに注目しますと本書のイメージに近いのは裏メニューです。
飲食店などで正規のメニューに載ってない料理を指します。
このため常連客など一部の人しかその存在が知られていません。

表の数字 馬番、枠番
裏の数字 登録順 ・・・・ 枠順に載ってない数字

裏の数字、と言ってもその中身は誰でも入手できる情報です。
ただしこの情報は枠順と違って証拠が残りませんから取り扱いには注意が必要です。

主人 いらっしゃい
客 いつものやつお願い
主人 はい、いつものやつね

(はたから聞いている人には謎ですが)
当事者はこれで十分です。
わかる人にはわかる隠語のような言い回しが枠順にあります。
解読にはある程度練習が必要です。

賭けはやってはいけません。
でも競馬はいいですよ。
わかりにくいの声は法曹界からも聞かれますが整合性は取れているのです。
素直な心で向き合うと誰でも同じ結論に到達するはずです。

ゲームの勝敗が偶然に依存している場合の賭けを禁止しているのが刑法の規定です。
システムの外にいる競馬は刑法が想定している賭けでないため何ら問題はない。
このことを確認したのが前述の法体系です。

ジョークです。
日本を訪れた外国人が言います。
日本は馬券の控除率が高いのになぜ国民が文句を言わないのか不思議だ。
それを聞いたJRA職員が丁寧に応対します。
控除率25%の中には10%のサービス料が含まれております。
一部の競馬ファンの方にはご理解いただき皆様喜んでお支払いいただいております。

ではもうひとつ、こちらは農林水産省でのやりとり。
大臣、いい報告と悪い報告があります。
いい報告から聞かせてくれたまえ。
はい、馬券発売による税収が半年間伸びています。
(怪訝な顔をして)で悪い報告というのは。
はい、秘密が漏れたようです。

競馬は特別―。
このメッセージを受け取ったのが裏予想学部になるわけですが冒頭の悩みに戻ります。
どもどうやって?

ワカル ⇔ カワル(変わる)

わかった後で変わるわけではありません。
わかると変わるは同時です。
世界の見え方が変わった瞬間、今までわからなかったことがわかる。
百聞は一見に如かず、読者自身の目で確かめてください。